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デジタル教科書は、紙の教科書と同一の内容をデジタル化した教材のことです。文部科学省では、紙の教科書に代わり、2024年からの本格導入を進めています。
日本ではICT教育の遅れが指摘されています。児童生徒への1人1台の端末環境は、ほぼ整備されましたが、まだまだ活用できていないのが実情です。これらの課題を解決するためにも、デジタル教科書の導入が期待されています。
そこでこのコラムでは、デジタル教科書について、普及率やメリット、効果などをまとめてご紹介します。
デジタル教科書とは、紙の教科書と同じ内容を電子化した教材のことです。「GIGAスクール構想」により、小中学校では2021年末までに1人1台の学習用端末の整備が完了しました。その配布されたタブレットやノートPCを使って表示するのがデジタル教科書です。
デジタル教科書には「学習者用デジタル教科書」と「指導者用デジタル教科書(教材)」の2種類があります。
「学習者用デジタル教科書」は児童生徒が使用するもので、文部科学省では、「紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く)をそのまま記録した電磁的記録である教材」と定めています。
そのほか、教科書と組み合わせて活用する「学習者用デジタル教材」も発行。動画やアニメーション、朗読などのコンテンツを収録しており、一緒に使用することで児童生徒の学習の充実を図ります。
「指導者用デジタル教科書(教材)」は、教師用のデジタル教科書です。プロジェクターなどの大型提示装置を使って拡大表示できたり、解説動画が収録されていたり、授業をサポートしてくれます。教科書には掲載されていない音声や写真なども充実しており、コンテンツを編集して教材資料を作れる機能も搭載しています。
現在、デジタル教科書は教育の現場でどの程度使用されているのでしょうか。
文部科学省の調査によると、令和元年度の小学校での発行はわずか20%でした。しかし、令和2年度には小学校用教科書が約94%、中学校用教科書が約25%となり、令和3年度にはともに約95%まで達成。この3年で発行比率が大きく向上しました。
一方、文部科学省の「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、学習者用デジタル教科書の普及率は、小学校で6.4%、中学校で5.9%、高校で5.3%。まだまだ普及しているとはいえない状況です。
その大きな要因は、デジタル教科書が有料であること。紙の教科書を今後も無償化とするのか、それともデジタル教科書を優先するのか、いまも議論が続けられています。
紙とデジタルを併用する案も検討されていますが、その場合どのようにしてコストを捻出するのかが大きな課題となるでしょう。
文部科学省は、2024年度の学習者用デジタル教科書の本格導入を目指しています。2022年度には、導入に向けた実証事業として、全国の小学5・6年生と中学生にデジタル教科書を無料配布。まずは英語から取り組みが進められています。
しかし、本格導入までに解決すべき課題は山積みです。クラウド配信の場合、同時に多くの児童生徒が利用してネット回線は耐えられるのか、デジタル機器を長時間使用することで健康面に影響はないのかなど、検証しなければならない問題がたくさんあり、実証研究が急がれています。
学習者用デジタル教科書は、どのようなことができるのでしょうか。ここからは代表的な機能についてご紹介します。
拡大
デジタル教科書は、図表や文章などを大きく表示できます。2本の指で広げるピンチアウト操作により簡単に拡大可能です。地図上の細かい地名を大きくしたり、わかりにくい図形を拡大したり、学習のサポートをしてくれます。
書き込み
ペンやマーカー機能を使って、デジタル教科書に直接書き込みができます。紙と違い、間違えてもすぐに消せるので、躊躇なく書き込みが可能。色や太さなども選べるので、自分の意見と友だちの意見を色分けしたり、書き込みを繰り返して考えをまとめたり、試行錯誤がしやすくなります。
保存
教科書に書き込んだ内容は、そのまま保存が可能です。算数の答えや文章の要約など、あらゆる学習履歴が保存できます。教師は保存された情報を集約できるので、児童生徒の習熟度や学習過程などが可視化しやすくなるでしょう。
機械音声読み上げ
テキスト部分を音声で読み上げてくれる機能です。簡単なボタン操作で、次の行へ進めたり、章の最初に戻ったり、自由に読み上げ位置を変えられます。スピードや声の大きさなど音声設定もできるので、一人ひとりに合わせたカスタマイズが可能です。
色変更など
文字の色や背景色を変更して、教科書を見やすくできます。色の調整以外にテキストの書体や文字サイズ、行間なども変更可能。すべての漢字にふりがなをつけることもできます。
無料でデジタルパンフレットを体験する
文部科学省では、児童生徒の学習の充実を図るために「学習用デジタル教材」との一体的な使用を推進しています。デジタル教科書にはない朗読や動画コンテンツなどを収録しており、活用することで学習の幅が広がります。主な機能は以下の4つです。
朗読
声優や俳優などプロによる朗読音声を収録。登場人物ごとに読み分ける感情豊かな朗読は、イメージを膨らませやすく、物語の内容も理解しやすくなるでしょう。
抜き出しツール
抜き出しツールは、物語文から文字を抜き出して整理したり、ポイントだけを抜き取って要約したり、自分の考えをまとめる際に活用します。本文をノートに書き写す手間が省ける点もメリットです。
動画など
算数用具の使い方や家庭科の調理手順、社会科の資料映像など、教科書と連動した動画コンテンツを収録。アニメーションなど映像でわかりやすく学べ、児童生徒の集中力も持続しやすくなります。
ドリル
計算問題や漢字テストなど、教科書の内容に連動したドリルで効率的に学習できます。デジタルなら、入力から答え合わせまで児童生徒だけで完結することが可能。教師の負担を軽減できます。クラスの学習状況を一覧で把握できるため、一人ひとりの理解度に応じた習熟度別学習を促進してくれるでしょう。
デジタル教科書の導入は、ICT教育の発展だけでなく、新学習指導要領で求められている「主体的・対話的で深い学び」の実現も期待されています。
それでは、デジタル教科書の活用でどのような成果が得られるのでしょうか。ここからは具体的な活用効果をご紹介します。
デジタル教科書と連動して動画コンテンツを活用すれば、児童生徒の関心を喚起できます。たとえば、外国の風景など児童がいままで見たことのない事柄も、動画で視聴すればイメージがわき、興味を抱きやすくなるでしょう。
また、拡大機能も興味を引き起こすのに効果的です。図表を大きく表示させることで、細部まで確認できるようになり、関心を持続しやすくなります。
デジタル教科書なら、書き込みが簡単に繰り返せるので、登場人物の感情把握なども容易にできるようになるでしょう。しっかりと自分の意見がまとまれば、グループ学習でのより積極的な対話が実現します。いままで本文をノートに書き写していた時間もカットでき、考えを形成する作業に集中できるでしょう。
デジタル教科書と連携した動画やアニメーションを活用すれば、文章だけでは伝わりにくい内容も理解しやすくなります。たとえば、古文の時代背景を具体的にイメージするのは難しいもの。ですが、当時の出来事や文化的な背景など、動画で見れば理解しやすくなります。これが古典に親しむきっかけとなれば、古文の意味もつかみやすくなるでしょう。1度ではわからなかった動画も、繰り返し確認できるので自分のペースで学べます。
デジタル教科書は、「書く・消す」を繰り返せたり、気になるところを拡大できたり、個人に合わせた自由な学習を促してくれます。文字色や背景色の変更、フォントの選択などで、さまざまな児童生徒のニーズにこたえられるのも大きなメリットです。
また、デジタル教科書は教師の教材準備もサポートしてくれます。指導者用のデジタル教材には、資料作成機能もあるので、文章を抜き出したり、図式をそのまま流用して作成すれば教材準備も簡単です。大型提示装置と併用することで、板書の時間削減にもつながります。教師の負担も減り、残りの時間を子どもと向き合うために有効活用できるでしょう。
デジタル教科書は多くのメリットを含んでいます。そこからビジネスにおけるデジタル活用のヒントも見つかるかもしれません。
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